夢の中で誰かに話しかけられた。
もうやめなよ
我慢なんてする必要ないんだよ
どうせ同情だけしかないんだよ
愛なんてないんだから
わかってる
そんな事ずっと前からわかってるよ。
だから、このまま私は眠っていたいの。
お願いだから私を起こさないで!
このままずっと眠り続けていたいんだよ!
と願いながら、医者に処方された眠剤を大量に飲んではみたものの、そう簡単に永遠の眠りにはつかせてはくれない。
処方された眠剤を仮に全部飲んだ所で、丸一日眠り続け、起きた時には酷い吐き気と激しい頭痛に悩まされるだけなんだよ。
無駄だとわかってても、つい繰り返してしまう。
やっぱり私…おかしくなってるよ
ここ数日はブサと居る時さえも笑えない。
1人で携帯片手に俯いたままオルゴールを聞いてるだけ。
私…何の為にブサの所に来てるんだろう?
会えるのが嬉しいからだよね?
自分に問いかけてみる。
わからない…
私が来てもほとんど喋らないでパソコンの前に座ってるか、携帯をいじるか、それしかない彼を見てても、嬉しいわけがないよ。
大晦日を1日前にした日。
ついに別の自分が私の中から姿を現わしたんだ。
本当に無意識だった。
そうさせたきっかけがわからないまま、私は台所のカゴに入っていた包丁を手に持って、ブサに近づいてた。
私が邪魔なんでしょ!
邪魔なら消えてあげるよ!
どうせ私がいなくなった所で、いなくなった所で貴方は何とも思わないんだから!
本気だったのか、ただの脅しだったのかわからない、わからないけど、私はブサの前で自分の首に包丁をあてていたんだよ。
後先の事なんてどうでもよかった。
自分の存在が、ただ唯、苦しくて刹那くて。
我慢しようと思えば思うほど自分を消してしまいたい!
その気持ちだけが私を支配していたんだよね。
彼の目の前で死ねたら本望。
そしたらきっと、彼は私とゆう存在を一生忘れないだろう。
それだけでいいんだ。
ブサを目の前に何か泣き喚いてた気がするけど、覚えてないや。
無理やり包丁奪われた事は頭の中に残っているけど、あの時ブサが私にどんな言葉をかけたのか、かけなかったのかもわからない。
精神が錯乱してたのもあるが、この時の私は丸3日間一睡もしてないのだから当たり前の話。
フラフラしたまま、立っていられるのが不思議なくらい意識が朦朧としてたな。
そんな私にブサは家に帰れとゆう。
彼氏、彼女の関係じゃなく、普通のライダー仲間として付き合おう、と。
落ち着いたら、またいつでも遊びに来ればいいよ。
今は少し、自分の体大事にして休んだ方がいい。
ちょっと待って。
それって自分にとって都合のいい話にしてるだけだよね?
こんな面倒くさい奴いらねぇ
出てけ!って事なんでしょ?
そうだよね…
こんな壊れた女を相手にしなくったって、貴方にはもう、別の人がいるもんね。
わかってたよ…
ずいぶん前からわかってた。
貴方の中には私は存在しないって事…
わかってて傍に居たのは私…
その日、自分がどうバイクを運転しながら自宅まで辿り着いたのか。
信号が赤だったのか青だったのか。
どこをどう走り、どのくらいで自宅に着いたのか、私の記憶には何も記録されていなかった。
唯一覚えてるのは、自宅に着いた時。
母親に頬を叩かれ
「このバカ娘!」
その後ギュっと抱きしめられた。
それだけしか記憶にない。